呉という町。

呉という町。
初めて訪れた呉は、「街」よりも「町」と書く方が似合っているように思えた。
狭くはない。
「街」としてありながら、「町」の親しみ易さがあった。

駅のロータリーにある「未来」という像と、木陰に集まる鳩。
鳩も日陰が良いのか、確かに熱いね、と声を掛ける。
静かな町である。
道幅が広い。
山を背に海に向いている。

ホテルに入り、衣装合わせと打ち合わせの時間まで散策をしよう。
フロントで「見るべきもの」を訊ねると、大和ミュージアムを薦められた。

戦艦大和の10分の1のスケール。
この10倍の大きさの戦艦が沈んだ歴史がある。
優れた造船技術と戦艦と潜水艦のことを、初めて、ほんの少しだけ知る。
呉のことも。

呉駅の線路は美しい。

撮影の合間に町を見る。
暗渠(あんきょ)にならずに残されている溝渠が多い。
とても好きな風景。

灰色の大きな船が煙を吐きながら呉港を離れて行くのを見た。
港にある3隻の黒く大きな潜水艦を見たときに、歴史の違いを知った。
土地の成り立ちに、家族の思い出に、生きていく上で忘れてはならないことに、
おそらくは暮らしの中の、きっと引き出しの中に、今も戦争があるのだと思った。

美しい煉瓦塀。

黄色い車両が単線を走る。

撮影させて頂いたお宅のお仏壇があまりにも立派で、手を合わせる。
まだ豪雨災害の痕がそこここにあって痛々しいけれど、
呉には、古く美しいものがたくさん残されていて、
人は温かく、笑顔が大きく、優しい。
思い返すと、親戚に会いに行ったような心持ちになっている。
観光らしいことはできなかったけれど、少しだけ呉という町に触れた旅だった。
呉の人たちの懐かしい風景に、一日も早く戻れますように。

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