夜のスーパーで。

家の近くのスーパーは、ちょっと懐かしい音楽がかかっている。
90年代の、CDを買って聴き続けた、口ずさめるほど馴染みのあった曲が。

家に帰る前にスーパーに寄る。
その日の夕飯の買い物だったり、母に頼まれた物だったり、
ちょっと寄って行くか、ということもある。
買う物が決まっている時でも、たいてい一回りする。
左の入り口から入って、3列目から始めて、ビールと炭酸水をカゴに入れ、
4列目でいつもの緑茶、5列目のお菓子は飛ばして、
6列目で母がお昼に好んで食べるお蕎麦、7列目で新しい調味料はないかと見て歩き、
8列目でお米とお味噌をなんとなく見て、9列目と10列目で消耗品を確認して、
11列目でお豆腐と漬け物を選び、野菜と果物の値段を気にして、
そこからぐるっと引き返し、魚とお肉を見て、2列目でチーズ、
1列目もさささっと通ってからレジに並ぶ。
レジに立つ中年を過ぎた優しい笑顔の女性と若くてきれいな女性は顔見知りで、
だいたい彼女たちのどちらかのレジに並ぶことにしている。
こんばんは、と挨拶を交わす。
恐らく、彼女たちはわたしのカゴの中から暮らし振りを推測することが出来るだろう。
好みも知っているだろう。
その日の服装から、わたしの一日を想像することも出来ると思う。

スーパーの中を歩きながら、その日のことを思い返したり、ちょっと考え事をしたりする。
それはひとりだけの時間で、家に帰る前の一呼吸。

電車やバスに乗っている時間も好きなのだけれど、
うっかりするとすぐに乗り過ごしてしまい、向かいのホームの電車に乗り換えたり、
あらぬ距離を歩いて戻るというマヌケなことをするはめになるので、
スーパーの中を歩くくらいが丁度良い。
外出に車を使っていた頃は、家に着く前に適当な場所で車を止めて好きな音楽を聴きながら、
しばらくぼんやりと過ごした。

ひとりっ子の性(さが)だろうかと思う。
一日のうちにひとりの時間を作りたがる。
夜のスーパーで、わたしはわたしの一日を振り返る。

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