おにぎり。

食の細い子供だったわたしに、母はとても小さな丸いおにぎりを出してくれた。
塩味だけの白い丸。
お皿にころころと載せられた丸は、食べることにあまり興味の無かったわたしの気を惹いた。

運動会や遠足のお弁当は俵のおにぎりだった。
白い俵に味海苔が巻いてあった。
具はいらない。
母のおにぎりはずっと俵だった。

中学生になって、コンビニのパリパリの海苔を自分で巻くおにぎりを初めて食べた時は驚いた。
美味しいのか、そうでないのかもよくわからなかった。
ごはんと具と海苔が別々に口の中に入って来て、あまり好きになれなかった。
おにぎりなのに海苔がパリパリの必要あるのか?

小母のおにぎりも小振りの俵で、山口のしそわかめがふんだんに混ぜ込まれていた。
美味しくて、いくつでも食べられる。
10代の頃、小父小母の家に泊まりに行って、三人でお昼に食べるおにぎりはとても美味しかった。

友がお花見のお弁当に詰めてくれるおにぎりは大きな三角で、
焼き海苔を大きく切って優しくおにぎりを挟むように巻いてある。
具は鮭、おかか、梅、漬け物が添えられる。
これもまた美味しくて、大きいのに全ての具を食べないと気が済まない。
お腹いっぱいである。

30歳を過ぎて小母のおにぎりを久し振りに食べた。
大きな丸いおにぎりで鮭と甘い炒り卵が入っていた。
きっと小母はおにぎりを作る時、楽しいに違いないと思った。
真似をしてもあの美味しさにはならない。

遠方に住む友の家に泊まりに行き、帰る時に、乗り物で食べるようにとおにぎりを持たせてくれた。
とてもきれいな三角できゅっとしていて、彼女がこんなにきれいなおにぎりを作る人だったなんて、と感激した。
とってもきれいなおにぎりだったとお礼を伝えると、彼女のお祖母さまに教わったのだと話してくれた。
受け継がれる美しいおにぎり。

母と時折、いろいろな具で小さなおにぎりをたくさん作っておにぎり祭りを開催する。
漬け物もたくさん切る。
これは楽しい、楽しいけれど食べ過ぎる。

遠出をする時に一人であれば、仕方なく何かを買って食べるより、おにぎりをふたつ作って持って出る。
10代の頃は、母に作ってもらったおにぎりをひとつ鞄に入れて出掛けた。
学校の帰りに撮影に行くと途中でお腹が空いてしまうので、母のおにぎりがあると安心だった。

ここ数年の撮影の時の朝ごはんに頂くおにぎりはとても美味しい。
いろんな種類があって目移りしてしまう。
一番好きな具はなんだろうと考えるけれど即答できない。
素敵なおにぎりを頬張りながら、おにぎりの記憶を振り返る。
幸せだ。

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