田んぼ道、ツバメの飛ぶ家。

田植えが終わったばかりの田んぼは美しい。
風が吹いて、水が揺れて、景色が生き物のようだと思う。

砂利の道が好きだ。
でも砂利道で走ってはいけない。
子供の頃、砂利道で転んで膝を大きく擦り剥いた。
血の滲んだ傷口に細かい石がたっぷりと入り込んで洗い出すのに苦労した。
それ以来、砂利道では転ばないように細心の注意を払うようになった。

砂利道を挟んで麦畑がある。
ここは天国かと思う。
目に見えない大きな者が、わたしをどこかへ連れて行ってくれる。
どこかへ。

手の届かない朴の木(ホオノキ)の花は夢想を誘う。

空が映る。
なんて美しいのだろう。

たくさんのツバメを見た。
ツバメはいつどこで見ても、母の育った秋穂の家を憶い出す。
季節が来ると大きな家の中にツバメが巣を作った。
幼いわたしは口を開けて頭の上を飛ぶツバメたちを見上げた。
牛もいた。
お蚕を飼っていたのはあの家だったろうか。
真っ白い髪の曾祖母の寝間を訪ねた。
熊のぬいぐるみをもらった。
幸せな記憶。

田んぼや畑や、樹の上の花や、ツバメや、吹き渡る風を見ると、
連れ戻されるように憶い出す風景がある。

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