日々。

遠出が続いた。
朝、駅のホームで待ち合わせる。
朝、おにぎり屋さんで待ち合わせる。
朝、改札の前で待ち合わせる。
いつもと違う乗り物はわくわくし、そわそわもし、
なにかを忘れているのではないかと少し不安になり、
今更忘れていることに気付いても仕方あるまいと気に掛けるのをやめる。
目の前に座る彼女は30分を過ぎた辺りで「なんだかとっても・・・・」と言いながら、
ストンと眠りに落ちてしまった。
わたしは流れる景色に目を凝らす。

団地が好きだ。
鉄塔や工場が好きだ。
屋根が好きだ。
川が好きだ。
橋が好きだ。
畑が好きだ。
山が好きだ。
今は所々に藤の花の紫が見える。
富士山と南アルプスが交互に現れる。

「せ〜んろはつづく〜よ〜、ど〜こまでも〜、の〜をこえやまこ〜え、た〜にこえて〜」
気分にぴったりなので小さな声で口ずさむ。
「あ〜たま〜をく〜も〜の〜う〜えに〜だ〜し〜」
富士は日本一の山なのだ。
子供の頃に覚えた歌は歌詞が良いなぁ、とすごく思う。

行きは電車、帰りは車。
行きと帰りで交通手段を変えることはよくあることなのだけれど、
ふと、どこへ行っていたのか、今朝の出来事が数日前のことのように思えたりする。
あれは、いつのこと?
満月と一緒に暮れていく一日を振り返り、今日の終わりを見届ける。

彼方に富士山。

夜も深くなって月と歩くいつもの帰り道には甘い香りが漂う。
道の両側にジャスミンの花が満開で、夜は殊更に香りが濃く、心地良い。

橙色の少し歪んだ大きな月は美しかった。
いつものスーパーのレジで「こんばんは」と声を掛けると、
「今日はなんだか感じが違いますね」とにっこりされる。
春の宵。

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