富士山見えた。

甲府に向かう特急かいじの中から見る富士山。
花の咲く季節には美しい眺めだろうと思う。
甲府の街から見る富士山。
川を渡る橋の欄干には葡萄。
道の間から南アルプスも見える。
ぐるりと山に囲まれた街。
こちら側から見る機会はあまりないので、いつもと違う富士山だ。

東京での日々の中で、富士山が見えると「あ、富士山」と思う。
坂道の途中や、車を駐めたホームセンターの屋上や、電車の中や、友の家のベランダや、
思っていなかった場所で不意に振り返って見えたりすると、「今日は良い日だな」と思う。
こんなところでも見えるのかと思うような場所からも見えることがあるので、
「本当にデカいんだ」と改めてその大きさを確認することになる。
富士山は大きくてかっこいい。

雲が厚かったり霧が濃かったりする深い夜には、たぶんちょっと腰を上げて歩いていると思う。
駿河湾の海に足を浸して、気持ち良いなと少し海の底を掻き混ぜたりする。

20代の後半に2年ほど、富士山の見える部屋で暮らしていた。
朝起きて、出掛ける時に、帰って来て、夜眠る前に、一日に何度も富士山に挨拶をして、
その美しい姿を眺めて過ごした。
その話はいつかまた、そのうちにゆっくりと。

電車の旅は、心も旅をする。
富士山は見えないけれど、こんなところで暮らせたら、短い間でも構わないから、
こんな景色の中で暮らせたらどれほど心が満たされるだろう。

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