桜の空に思うこと。

月夜の桜。
美しい眺めだった。
妖(あやかし)もうっかり姿を隠すのを忘れてしまいそうだ。

見上げたまま、しばらく口が開いていたな。
ひとりだったので、好きなだけ立ち止まり、少し歩いてまた立ち止まる。
あぁ、きれいだ。
道端に寝転んでしまいたい。

いつかわたしの庭を持つことができたなら、桜の木を真ん中に植える。
そして、桜の季節の十日か二週間、休みを取ってずっと家にいる。
一日中ひとりでわたしの桜を堪能する。
桜の夢。

父の転勤で4年生の夏休みに転校した小学校はとても大きくて、
たくさんの桜の木が校舎の周りに植えられていた。
春になると一度にたくさんの桜が咲き、それが驚くほど美しいこと、
4月はいつもよりも世界が明るく見えること、心までふわふわとすることを知った。
毛虫がたくさん付くので桜の木の下を歩く時は気を付けなければいけないことも、ついでに知った。
わたしは母にピンク色の長袖のポロシャツを買ってもらった。

ライトを当てられた夜桜よりも、背景が青空の昼間の桜が好きだ。
友の家の隣に広がる公園の桜の木の下で、
大きな敷物を広げて、友の詰めてくれたおにぎりをみんなで頬張った。
あれは楽しかった。

白鳥の戻ったお池を縁取るように桜が咲いた。
白鳥たちは嬉しそうに見えた。

小さな川沿いの小さな公園にある桜の木は、しっくりと理想的に思えた。

母と散歩をしていたら、可愛いお花見の宴を見掛けた。
正しい春の過ごし方。

春は短く、なにか新しいことを始めるべき時と思わせる。
花が咲き、花が散り、空の青は深くなる。

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