蓮根、ピーマン、茄子。

毎年12月になると、友人の家に愛知の泥付き蓮根が届けられる。
わたしはありがたいことに毎年そのお相伴に与っている。
この季節の最高の栄誉と思っている。
なにしろ、蓮根はわたしの好き好き三大野菜のひとつ、大好物。

新鮮な泥付き蓮根はそのままにしておくと数日で傷んでしまうので、
丁寧に泥を洗い流し、立て掛けやすい長さに折って水を切り、きちんと乾かす。
日頃、店で目にする蓮根は白くて形もきれいだけれど、ひと節かその半分。
友人のところに届くものは、ふた節か三節なのでその状態を見られるのもこの機会しかない。
そして、さっき泥から抜いて適当に払って箱に詰めてすぐに送ったからね、という味がする。
ほんの少し塩を振ってオリーブオイルで焼くだけでとても旨い。
ああ美味しい、ああ美味しい、と頬を叩きながら友と蓮根を味わう。
最高だ。

好き好き三大野菜のあとのふたつはピーマンと茄子。
幼い頃は他所の子供と同様にピーマンは苦手だったのだが、ある日を境に大好物になった。
晴れた午後、小学校から帰ると母が焼き飯を作ってくれた。
とてもさっぱりしたもので、細かく切った玉葱とピーマンが入っていた。
ピーマンが入っている、そう思ったけれど、
母がとても細かく切っているところをじっと見ていたので、
そして炒めている間とても良い匂いがしていたので、
ちっとも嫌だと思わずに気に入りの焼き飯のスプーンで口に運んだ。
焼き飯のスプーンというのは、ティースプーンよりも大きくスープスプーンよりも少し小さい、
柄の長さと匙の部分が子供の口に丁度良い中くらいの大きさのわたし専用のものだった。
柄の先に青と赤の線が斜めに入っていた。
焼き飯はひと口食べたらピーマンも玉葱も、美味しくて、美味しくて、
それからピーマンはわたしの大好物になった。
あの日の天気とか、台所に立つ母の後ろ姿とか、細かく細かく切られていたこととか、
気に入りのスプーンとか、そういういろいろなことがピーマンを好物にしたと思う。

ひと月ほど前、近所の店で山積みになったピーマンの横に張り紙があった。
50パックのはずが1,500パックも発注してしまったので半額にします、というような内容。
最後に、助けてください、とあった。
可笑しかったし、大好物のピーマンなのでたくさん買って毎日食べた。
贅沢な数日だった。

茄子はどう料理しても好きなのだけれど、
ただ焼いただけのものにさっと醤油を掛けて豆板醤を少し付けるというのが好みである。
母の好物でもあるので、ふたりでお祭りのように茄子を焼く日がある。
炒めるのではなく、丁寧に両面に焼き色を付ける。
茄子旨い、茄子旨い、と言いながら結構な量を食べる。
数年前までは食卓の体裁を考えていろいろな野菜を焼いて大皿に並べていたけれど、
母もわたしも結局、茄子だけで良いね、と今に至る。

好物を美味しく頂ける幸せ。
わたしの好き好き三大野菜は蓮根とピーマンと茄子です。

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