秋深し。

この景色は日本だなぁ、と思う。
懐かしくて、帰りたいと思う風景を少しだけ残していて、
今のわたしの暮らしに程良い。
家々が並ぶ間に本気の畑があったりする。
家の近くのほうれん草畑は美しい。
畝を作り、種を蒔き、この季節は竹をアーチ状に土に刺して、ビニールをかける。
それまでの作業工程を毎日のように眺めながら横を通る。
畑ってこんなにきれいに作られるものなのか、それともこの畑は特別に美しいのか。
昔からの地主さんはお屋敷に暮らし、
畑の世話をしながらマンションと駐車場を持っていたりするらしい。
時折、昔話の庄屋様のお屋敷のようなお宅があって、門からは家の全貌が見えず、
その手前に土蔵があって、敷地内に赤い鳥居もあって、お庭が果樹園。
たわわに実る柿は、絶対に食べ切れませんよね、と思うのに頂けないのを勝手に残念に思う。

ここに移り住んで10年が経った。
景色は随分と変わり、古い団地は何本もの立派な桜の木を切り倒して、
ぴかぴかのマンションに建て替えられ、その隣に新しい道路ができた。
今も続々と大きなマンションが建ち、
あっちの道路とこっちの道路を繋げる為に拡張が進められている。
そして何故だか老人の為の施設がいくつもある。
小学校はふたつ。
30年前はもっとたくさん畑があって、夜は暗くて、ぽつりぽつりと小さなアパートがあった。
不便な場所に大きなマンションがひとつとコンビニがひとつ、それから何棟もある団地、
それらが畑に囲まれて集落になっていた。
一番近い駅までたったか歩いて30分はかかる。
今でもバスは1時間に4本。
神社とお寺があって、細い川が流れていて、空が広くて、都内より2度ほど気温が低くて、
どこへ行くにも少し億劫になる場所。
それでもわたしは10年前の冬、15年振りにここへ戻って来た。
駅から遠くても、帰って来るとほっとする。
休みの日には、空を見上げると「今日は休みだ」と思える。
わたしは日当たりの良いこの土地をとても気に入っている。

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