月の大きな数日のこと。

休日に友と散歩をする。
また今度と通り過ぎてしまうばかりの日々の街は、
友の来訪によりゆっくりと歩き、わたしはここで暮らしていると思うことができる。

器を買い集めるのは、母から受け継いだことなのだが、
近頃は収める場所に困るようになり、どこにしまうの、と母にも咎められる。
見るだけ、見るだけ。

ルピナスを見ると可愛い子に会った時のように胸がきゅっとする。
みんな家に来てちょうだい、と思う。

クリスマスローズを育て始めると止まらないらしい。
どんどん鉢が増えて行くと聞くので、手が出せない。
近くの庭や花屋に並んでいる様子や友の店に飾られているのを見るくらいが、
わたしには程良い。

新しくできたパン屋のクロワッサンをとても気に入っている。
クロワッサン巡りもこれで落ち着いたなと思うけれど、
今度はあのパン屋がなくなってしまわないかと心配で仕方ない。

日頃行くことのない町の住宅の間を歩いて好みの建物を見付けると嬉しい。
行きと、帰り。
昼も良し、夜も良し。

友とふたり3時間、話し尽くす。
あの頃も話すことに時間を費やした。
歳を重ね、話題も変わったけれど、今も同じように。
メールではなく、電話でもなく、顔を見て話すことが有功であるとわたしたちは知っている。

お愛想の良い子がいる町。

建物の入り口にいる小さな赤い魚。
2畳ほどの水場に小さなものが泳いでいるだけで、その建物も生きているような感じがする。

春もそう遠くないらしい。
桜の芽が膨らみ始めた。

冬の間にちゃんと冬服を着る。
古いものを直したり、手放すかどうか考えたり、冬には冬を楽しむ。
そうしている内に春が来る。

白い大きな月だった。

物語の中の空はこんな色なのではないかと思った。

月が大きいと安心するのは、見守られているような気がするからだろうか。

さて寝るかという時刻になって、大切なことを忘れていたことに気がついた。

海の向こうに暮らす友と3月の約束をした。

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