かじったぶどうの瑞々しい果肉の中にきれいに納まった種らを見て、少し申し訳ない気持ちになった。

こんなに甘くておいしい実、たいそうありがたいけれど、あーたたちこれ、“種”の保存&繁殖を目的でやってるんでしょうに、食べるさまビニル袋に捨ててゴメン、と。
鳥や小動物なら、どっかに運んだりウンコして土に還してくれるのに。

でもさ、いくら目的のためでも、ここまでのクオリティでこさえてくれなくてもいいんじゃない?
鳥やリスや熊、そこまで味分かんの? 頑張り過ぎだよぶどう。
品種改良の賜物とはいえ、一体なんのモチベーションで人間相手にこんなおもてなしをしてくれるのか?

うまいぶどうをつくる
→たくさん食べてくれる
→ぶどうがたくさん必要
→ぶどうの木増える

……なるほど! そういう魂胆か! ぶどうめ、あったまいいな!

ぶどうを見習わねばならない時が来たようだ。
昨今ブレイクしている“皮ごと食べられるぶどう”を見るに、やはり手軽じゃない面倒くさい女はモテない。
ながらスマホで手が汚れるからと売上げが落ち、生産終了が決まったチョコ菓子だって出てくる時代。

皮ごと食べられ、手が汚れない女にならなければ。
いやそもそも、中身がおいしくなきゃなんだけど。

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PROFILE執筆者プロフィール

大島智衣

エッセイスト・脚本家/おもに恋と'じーん'について ✐エッセイ『男子発言ノート』『好きにならずにいられてよかった』他 ✐脚本協力『獣道』内田英治監督 ✐脚本『花の名前』利重剛監督、BOYS AND MEN『キスのカタチ』/放課後の再放送ドラマ育ち。実家暮らし独身。おいしそうに食べます。