先日、話題の映画『カメラを止めるな!』を男友だちと観に行った。(※ネタバレ一切しません※)

「観た?」「まだ」「じゃ、今日行っちゃう?」とタイミングよく二人で観に行くことになっただけで、デートってわけじゃなかった。友だちだし、デートじゃない。映画館に散見する二人連れは概ねカップルだけれど、私たちはそうじゃない。

シネコンの、大きめの劇場の、夜の、席に余裕ある回に行ったから、席を一つ空けてチケットを買おうかとも思ったけれど、ぱぱっと並びの席を買った。
だけど、ポップコーンやコーラを買ったりはしなかった。だって、デートじゃないから。あんなの並んで買ってついばむのは、カップルだけだ(偏見)。
おひとり様は、コンビニに立ち寄って小腹を軽く満たす程度のスナックを買ってくるもの。おひとり様は準備が良い。
いつもはおひとり様の私も、ペットボトルのお茶とのど飴だけは準備し、上映前に彼にものど飴を分けた。のど飴なんて色気がないけど、友だちだからいいのだ。

映画館の女子トイレは面白い。
駅のトイレなんかもそうだけど、これからデートって女の子のおめかし族がズラッと鏡の前を占領している。
そんなムンムンした彼女たちをかき分け、私は個室の中でひっそりとかゆみ止めの薬を足に塗った。
先日から出ているじんましんが、薬は飲んでいるものの、時おり沸々と湧き上がってくるのだった。上映中にどっかかゆいんじゃ、観た気にならない。リップやチークの代わりに、私はかゆみの出ている箇所に入念に軟膏を塗り込んだ。

おかげで、上映中はしっかりと映画に集中できた。皆わいわいと語りながら映画館をあとにする。私たち友だちカップルも。
「どうする? どっかで一杯やりながら話す?」
友人男子がこれからまだまだじっくり話したそうに誘ってくれる。

映画の醍醐味とはそうだ。観た後に、観た人と、語り合う。誰かと語り合いたくなるのが映画の醍醐味の一つ。
スマッシュヒット中のこの作品も、皆大いに語り合っている。だが私は違った。

「ごめん。薬が切れちゃうから帰るね」

……シンデレラか?

“王子様との楽しい舞踏会。
もっといたいけれど、夜中の12時になったら魔法が切れちゃう。”

よろしく、

“デートじゃないけど男子との楽しい『カメラを止めるな』。
もっと語っていたいけれど、薬が切れちゃう”

とばかりに、後ろ髪引かれながら帰らなきゃだった。しまった!! だった。
友人には悪かったけれど、そう言ってその場を切り上げ、駅に向かったシンデレラ、いや“じんまシンデレラ”であった。

そう、一日一錠の飲み薬が、「こうまで顕著に?」というほど24時間で効き目がパタリと切れるのである。毎晩22時に服用している薬が、あと数十分で切れそうなのだった。というか、もうすでにあちこちかゆくなりはじめているのだった。塗り薬でしのいでもいいけれど、耐えられる自信がなかった。

カメラは止めてほしくないが、カユミは止めてほしかった。

これからは、いかなる薬も持って出歩くことにしたい。
いつ帰りが遅くなるようなことがあってもいいように。心ゆくまで友とその日観た映画の感想について語れるように。

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PROFILE執筆者プロフィール

大島智衣

エッセイスト・脚本家/おもに恋と'じーん'について ✐エッセイ『男子発言ノート』『好きにならずにいられてよかった』他 ✐脚本協力『獣道』内田英治監督 ✐脚本『花の名前』利重剛監督、BOYS AND MEN『キスのカタチ』/放課後の再放送ドラマ育ち。実家暮らし独身。おいしそうに食べます。