中学生の時だったか、宮沢りえが突然ヌード写真集を出してビックリした。
真木蔵人と西田ひかるとかとドラマに出てて小室哲哉の歌を歌ってたのに、ヌードって! と。

当時は、「ヘアヌード」の価値や意味が分からなかった。
だから、そんな女子中学生が宮沢りえの裸を見てしたことは、彼女とおんなじポーズを取ってみることだった。
壁に自然のままの姿で寄りかかってこちらを向き、恥じらいの部分がちょうど隠れる位置で両手を重ねて悠然と笑みを浮かべる、宮沢りえと同じポーズを。

そうしたら、届かなかった。手が、あそこに。

宮沢りえは余裕しゃくしゃくであそこの前で手を組んでいるというのに、私は全然そこまで届かない。うーんと伸ばしてみたって、猫背でトイレを我慢しているミニ露出狂みたいな格好になってしまう。フリーキックのときのサッカー選手だったら、「どーした? 真面目に壁作れー」と監督から怒られるところだ。

“ 宮沢りえ、腕長い。私、めっちゃ短い。”

宮沢りえのヌードは、それを的確に、夢見がちな思春期女子に教えてくれた。

そんな宮沢りえに私から教えられることはあるだろうか?

あなたは私が手の届かないところに手が届く、手の届かない存在だ、ということ以外に。

春に道端で、太い花芯のまわりを小さな白い花(おしべ)が円状にチラチラ咲く花が私はとっても好きで、ちょっとアホみたいで。その花が、夜帰り道で見たら、すっかり小さな花たちが下に垂れていて。あんなに綺麗に円形に咲いているのは昼間のうちだけで、夜はひっそりと休んでいるんだよ。とか。

毎朝の通勤路で、少し遠回りして会いに行く三毛猫が、実は双子で。姉妹でも性格が全然違ってて、臆病で警戒心の強い方にはめったに会えないんだよ。とか。

いつか、誰かにこっそり教えたいと思っていることたち。
いつか、大切な誰かだけに言うつもりで大事に取っておいていること。

ずいぶん、もう、そんな話を聞いてくれる恋しいお相手があらわれないので、届くかわからないけど宮沢りえさんと、これを読んでくれたあなたにだけ、教えたいと思います。

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PROFILE執筆者プロフィール

大島智衣

エッセイスト・脚本家/おもに恋と'じーん'について ✐エッセイ『男子発言ノート』『好きにならずにいられてよかった』他 ✐脚本協力『獣道』内田英治監督 ✐脚本『花の名前』利重剛監督、BOYS AND MEN『キスのカタチ』/放課後の再放送ドラマ育ち。実家暮らし独身。おいしそうに食べます。