デスクで食事をしている人を見ると「よく人前で食べられるなぁ」と思う。

私にはできない。
だって、一人で食べるのって、一人で「する」のと、同じじゃない?

お店とか休憩スペースで食べるならいい。だけど、食空間ではないオフィスで、デスクで、いきなり食べ始めるって……恥ずかしくない? 食べるななんて言ってるんじゃなくて、恥ずかしくない? 見られとるよ? と赤面してしまう。

人前で裸になるのは恥ずかしいけど、そこが銭湯ならええいと脱げる。
人前で思うままに食べるのは恥ずかしいけど、食堂なら食べられる。

だけど職場で裸にはなれない。欲求に準じられない。なれないよね!?

だからどんなに面倒でも、同僚に疎まれようとも、私はランチを一人、職場から外へ出てって食べる。思う存分に食欲を満たすために。なんとややこしいoh!しまった‼︎な倫理観だろう!(?)

たまにどうしてもデスクでサッと食べなければならない時には、仕方のないことだけれど、たいそう苦痛である。何かのプレイだろうか、とさえ思う。ただし、それに興奮するほどの変態ではないから安心してほしい。

気になる男性とごはんを食べに行った。

お店で待ち合わせて、向かい合って席に着き、お互いにメニューを開いて選び始めた。会話もそこそこに。

いきなり? 私たちいきなりベッドイン? 会うなり早々、しちゃうの?

恥ずかしくてたまらなかった。でも、好きな人となら、それもまた良かったりもする。これについては変態と思われても甘んじよう。

一人で食べるのは、一人の“そういった”行為。
二人で食べるのは、二人の“そういった”行為。
三人以上だったら、それは……“歓談”。

そう思う。
食べるということは、実に、快楽に直結した、性的で生理的で個人的な行為だ。大好きだし、とても大切にしたい行為だ。

疲れて帰ってきて、無心で食べるポテトチップスのどれだけ至悦の極みなことか。
袋を開けた瞬間に思いっきり吸い込むポテトの香り……この世で最もステキな空気だと思う。

そんな鼻腔を突き抜ける快感に痺れ酔いしれることから始まり、最後には袋を口にガーッ。木っ端なポテトたちを喰むは其れ、まま絶頂。……お行儀が悪くてごめんなさい。でもだって、お行儀が悪いことって気持ちイイんだもの。ね。

そんなこともあって、誰も知らないと思うけど、私は人前でポテトチップスを食べたことはない。どうでもいいだろうけど、デスクめしも食べられない。

こんな私が夢見ること……それは、いつか白馬に乗った王子様が迎えに来てくれたなら。ポテトチップスを持って。そして二人で、こっそりと、ポリポリしたい。

こうして二人は、ポテトチップスをかすがいに仲睦まじく、いつまでもいつもでも、幸せに暮らしましたとさ。めでたしめでたし。

……そんな風になれれば!
なんて完ぺきなおとぎ話だろう。童話『馬鈴薯姫』として語り継ぎたい。

それまでは向こう当面、これまで通り、おいしいポテトチップス探しに注力したい。最近はもっぱら、ヤマザキの「アツギリ贅沢ポテト」がお気に入りです。セブンイレブンに売ってることが多いです。

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PROFILE執筆者プロフィール

大島智衣

エッセイスト・脚本家/おもに恋と’じーん’について ✐エッセイ『男子発言ノート』『好きにならずにいられてよかった』他 ✐脚本協力『獣道』内田英治監督 ✐脚本『花の名前』利重剛監督、BOYS AND MEN『キスのカタチ』/放課後の再放送ドラマ育ち。実家暮らし独身。おいしそうに食べます。