大人が、真剣に凌ぎあっていたドラマの時代|相原くんの「これ、読んでみる?」59


紹介本:『想い出づくり』(著者:山田太一 2016年刊行)

ドラマ『想い出づくり』が語られる時、まだ録画ビデオが普及していなかった時代、同じ時間帯に放送されていた『北の国から』と、どちらを観るか(観ていたか)は、必ず語られる。当時、私は高校一年生。迷うことなく、『想い出づくり』を観ていた。北海道の自然より、都会の雑踏の方が観たいこと、大人の俳優の演技と、大人たちが必死にドラマを作っているという熱を直感的に感じていたことが理由である。そして大好きだった『男たちの旅路』の脚本家・山田太一氏が脚本ということも大きい。ただし、『北の国から』も国民的名作であることは間違いない。しっかり再放送、ビデオで観ましたよ(笑)

2016年、里山社という出版社が山田太一氏の本、脚本集を復刊・刊行してくれた。とても嬉しかった。それも『想い出づくり』、『早春スケッチブック』、『男たちの旅路』というラインナップ。なんてセンスが良いのだ!と唸ってしまう。
シナリオを読むと、まだ10代の時に観たドラマのワンシーン、ワンシーンが甦る。
醒めた感じのちょっと不良を田中美佐(現:美佐子)さんが演じていて、最終回、喫茶店で働きながら「そろそろ真面目にならないと、お嫁にいけなくなっちゃう。みんな真面目になって、つまらないね」というシーンが妙に印象的だった。
そして、リアルに積み上げていったドラマの最後の最後、主役のひとりである香織(演じたのは田中裕子さん)に、突然、現われた男(根津甚八さん)と恋に落ち、結婚するというどんでん返しの物語が、実に鮮やかだった。そう、わかったような顔をしていても、諦めた様に生きていても…人生は何がおこるかわからないのだから。
現在、活躍している脚本家の人たち、もちろん好きな脚本家もいるけれど、自分がまだ10代、20代という年代で観ていた“大人たちが凌ぎあって創っていたドラマ”は、今でも懐かしく、永遠である。そんなことを感じる、“現役”の脚本集である。

2019.01.20
  相原 透










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カタヨリ荘

相原 透(アイハラ トオル) 東京生まれ。20余年、都内書店勤務。その後、出版社に転職。 週刊朝日、IN・POCKET(講談社)、銀座百点、公募ガイド 等  雑誌に書評、著者取材・原稿、寄稿多数。 講談社文庫『光二郎 分解日記 相棒は浪人生』(著者:大山淳子 2017年刊行)の解説を書く。 『カタヨリ荘』の住人になれて嬉しくて仕方がない毎日。 好きな作家:池澤夏樹、沢木耕太郎、桜木紫乃、伊吹有喜、大山淳子、柚月裕子