その一瞬、熱く、儚く… ホットロード|相原くんの「これ、読んでみる?」52


紹介本:『ホットロード』(著者:紡木たく 1986年~1987年刊行)

先日、九州出張の際、仕事先で挨拶をした女性の名前が、漢字一文字で「紡」さん。
ご両親が漫画『ホットロード』が好きで、作者の紡木さんの一文字から名付けたという。
おそらくご両親は、私と同世代だろうな、と思った。
1986年刊行のコミックは、当時圧倒的な人気だった。映画化、ドラマ化の企画はあっても、作者がОKを言わない、決して映像化はされない、それも嬉しかったように記憶している。ひとりひとりの語りきれない想いがこの漫画にはあるのだから。
ケータイもインターネットもない80年代の10代の物語。当時は主人公の和希や春山に感情移入して読んでいたが、今はその親や担任の先生の立場になって読むこともある。
和希が中学3年の時の担任教師・高津は良い先生だと思う。今はそれをすごく感じる。
和希や春山の輝きが愛おしく、まぶしく見えるのは、明日なんて考えない、一瞬がすべてのように生きているから。それは同時に儚く、危い痛みがある。
2014年に映画化。主題歌は尾崎豊。紡木さんの代表作『ホットロード』は“あの時代”が生んだ、“あの時代”だから描かれた作品として、これからも読み継がれていく。

“明日なんてない、いまこの一瞬がすべて”という生き方から“永遠に信じるもの”“続いていく日常”を受け入れた和希と春山の姿でこの物語は終わる。
春山は聞く「ぶたちゃん、今日のオベントーなーに?」
和希は答える「ハル巻き」
このエンディングを忘れることはないだろう…。










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カタヨリ荘

相原 透(アイハラ トオル) 東京生まれ。20余年、都内書店勤務。その後、出版社に転職。 週刊朝日、IN・POCKET(講談社)、銀座百点、公募ガイド 等  雑誌に書評、著者取材・原稿、寄稿多数。 講談社文庫『光二郎 分解日記 相棒は浪人生』(著者:大山淳子 2017年刊行)の解説を書く。 『カタヨリ荘』の住人になれて嬉しくて仕方がない毎日。 好きな作家:池澤夏樹、沢木耕太郎、桜木紫乃、伊吹有喜、大山淳子、柚月裕子