高橋三千綱さんの言葉|相原くんの「これ、読んでみる?」51


紹介本:『さすらいの皇帝ペンギン』(著者:高橋三千綱 2017年刊行)

「あなたは、必ずいい未来が待っていますよ。きっと想い描いた夢が叶いますよ」
そう、高橋三千綱さんは私に言ってくれた。
まだ、私が若く、無力で、毎日悔しがってばかりいた頃のことだった。
私は高校時代から高橋三千綱さんの本をよく読んでいた。新人賞受賞作『退屈しのぎ』、芥川賞受賞の『九月の空』、『天使を誘惑』、『真夜中のボクサー』、『カムバック』…。
高橋三千綱さんと同級生である知人から、「君の話をしておいたから、今度、紹介させてください」と言われ、その方と高橋三千綱さんの事務所にお邪魔した。
初対面の私に、高橋さんは、実に気さくに様々なお話をしてくださった。
私も嬉しくて、小説以外にも、高橋さんがラジオで南佳孝さんと対談されたこと、浅井慎平さんと映画について話されたこと、低予算でポルノ映画を撮ろうとした企画について、藤田敏八監督に目を誉められ、映画『スローなブギにしてくれ』に出演されたこと…話題は尽きなかった。「きっとまた縁があります。その時まで、お互いに元気で、仕事頑張りましょう」と高橋さんは私に言ってくれた。
数年後、文学賞のパーティーの後、あるバーに行くと、そこに高橋三千綱さんが飲んでいらっしゃった。「やぁ!縁がありましたね」と笑う高橋さん。
高橋さんは、たった一度の出会いをよく覚えていてくださり、丁寧に話してくださった。
「あなたのことはよく覚えていました。必ず再会があると信じていました。それから、あなたはきっと夢が叶う、というか、あなたが想い描く道が開けると思いますよ」とも言ってくださった。高橋三千綱さんが、そう言っていただいたことを、その後、私は落ち込み、不安になった時、自分の心のポケットから取り出しては確認していた。
昨年、週刊朝日誌上で高橋さんの小説『さすらいの皇帝ペンギン』の著者インタビューをおこなった。高橋三千綱さんに著者インタビューすることは夢でもあった。
小説は、著者自身が投影されている主人公・楠三十郎が、ドキュメンタリー番組のレポーターとなって南極へ行く物語。その経由地チリで、ある少女から皇帝ペンギンの雛をプレゼントされる。その雛を南極へ帰してほしい、という望みらしい。三十郎は、ペンギンの雛に“コドク(孤独)”と名づける。そして別れの時に“コドク”に語りかける。
「生き抜けよ。お前は生きているだけで価値があるんだ」と。
インタビューが終わり、そういえば…と以前、高橋さんが私に言ってくださった言葉を宝物のように大事にして、頑張ったことを伝えた。
高橋さんは「そう!」と笑顔になり、「もっともっと、いい明日がきますよ。あなたには」と話してくれた。私にとって、それは魔法の言葉だった。










ABOUTこの記事をかいた人

カタヨリ荘

相原 透(アイハラ トオル) 東京生まれ。20余年、都内書店勤務。その後、出版社に転職。 週刊朝日、IN・POCKET(講談社)、銀座百点、公募ガイド 等  雑誌に書評、著者取材・原稿、寄稿多数。 講談社文庫『光二郎 分解日記 相棒は浪人生』(著者:大山淳子 2017年刊行)の解説を書く。 『カタヨリ荘』の住人になれて嬉しくて仕方がない毎日。 好きな作家:池澤夏樹、沢木耕太郎、桜木紫乃、伊吹有喜、大山淳子、柚月裕子