猛毒注意!ブラックコメディの極致|相原くんの「これ、読んでみる?」㊺


紹介本:『夢を売る男』(著者:百田尚樹 2013年刊行)

信頼している編集者から、電話がかかってきた。「すぐに読んでみてください、そして感想、意見聞かせてください」と。
本のタイトルは『夢を売る男』、著者は百田尚樹。出版界を舞台にしたブラックコメディで、帯には「大暴走」「猛毒注意」とあった。
「出版社の編集、営業、書店員、そして作家になりたい人は必読ですよ」と本を薦めてきた編集者は電話を切るときに付け加えた。
その日の昼休みに本を購入。休み時間、帰宅の電車で読み続け、帰宅後もシャワーだけ浴びて、食事も後にして読み続けた。「面白い!痛烈な批判も込められていて、実にリアル!主人公・編集者の牛河原勘治はまさにダークヒーロー」そしてモデルになっている出版社も手に取るようにわかった。
物語は、本の出版、刊行を夢見る人たちに、牛河原が持ちかけるジョイント・プレス方式によって、踊らされる欲望、感情、どこまでも大きくなっていく自意識の図が描かれている。

牛河原の行動を批判すること、逆に正当化する人もいると思う。出版関係の仕事をしている、いないに関わらず、自分の中にいるかもしれない“牛河原”を感じることが本書の魅力のひとつである。
自覚的に悪い人を演じている牛河原の内面も描かれ、最後の最後の一行で、読者を鮮やかに裏切ってくれるのは見事であった。
後日、薦めてくれた編集者に電話をした。「ありがとう、すごく面白かったよ。毒にも薬にもなる小説でした」と。










ABOUTこの記事をかいた人

カタヨリ荘

相原 透(アイハラ トオル) 東京生まれ。20余年、都内書店勤務。その後、出版社に転職。 週刊朝日、IN・POCKET(講談社)、銀座百点、公募ガイド 等  雑誌に書評、著者取材・原稿、寄稿多数。 講談社文庫『光二郎 分解日記 相棒は浪人生』(著者:大山淳子 2017年刊行)の解説を書く。 『カタヨリ荘』の住人になれて嬉しくて仕方がない毎日。 好きな作家:池澤夏樹、沢木耕太郎、桜木紫乃、伊吹有喜、大山淳子、柚月裕子