人生を受け入れるということ|相原くんの「これ、読んでみる?」㊷


紹介本:『パリのおばあさんの物語』
(著者:スージー モルゲンステルヌ 翻訳:岸恵子 2008年刊行)

あるラジオ番組(収録)に、ゲストが女優・岸恵子さん。インタビュアーは事情があって遅刻してしまい、謝るインタビュアーに、岸さんは「私も遅刻したこと何度もあるのよ。待っているほうが、待たせているよりもずっと気持ちが楽。待たせているほうの辛さは相当なものだから。だから、大丈夫。もう気になさらないでくださいね」と。
どれだけインタビュアーは救われたことだろう。その後の番組の収録は、とてもスムーズにおこなえたと聞いた。
名女優、名エッセイスト、知的な女優である岸恵子さん。
言葉のチカラを知っている方なのだと思う。

その岸恵子さんが翻訳された『パリのおばあさんの物語』。原文の奥深さ、物語のすばらしさ、素敵なイラスト、そして心に入ってくる翻訳・・大人にも、子供にも、広い世代に支持されるロングセラーの絵本である。
おじいさんと死に別れ、子供はいるが、今はパリでひとり暮らしをしているおばあさん。
できないことも多くなってきた、身体も若いころの様にはいかない。それでもユーモアも交え、「やりたいこと全部ができないのなら、できることだけでもやっていくことだわ」(本文より)と思うおばあさん。
時代背景や、人種の問題に翻弄された時を生き、苦労も不安もあった人生であるのに、おばあさんの生き方はとても綺麗なのだ。その姿は強く美しい。
過去を思い出しながら、現在の自分、日常を語るおばあさんの物語、何歳であっても読者は、読後、自分の生きてきた過去と現在、そしてこれからを考えることでしょう。
岸恵子さん、すばらしい翻訳をありがとうございます!










ABOUTこの記事をかいた人

カタヨリ荘

相原 透(アイハラ トオル) 東京生まれ。20余年、都内書店勤務。その後、出版社に転職。 週刊朝日、IN・POCKET(講談社)、銀座百点、公募ガイド 等  雑誌に書評、著者取材・原稿、寄稿多数。 講談社文庫『光二郎 分解日記 相棒は浪人生』(著者:大山淳子 2017年刊行)の解説を書く。 『カタヨリ荘』の住人になれて嬉しくて仕方がない毎日。 好きな作家:池澤夏樹、沢木耕太郎、桜木紫乃、伊吹有喜、大山淳子、柚月裕子