『書かなければならない想い』

 

 

 

 

 

紹介本:『95』(著者:早見和真 KADOKAWA 2015年刊行)

「20年前の僕は、今の僕をきっと褒めると思いますよ」と『95』の著者、早見和真さんは言った。2015年、刊行時の著者インタビューのこと。
早見さんが、高校生の時に読んだという、村上龍さんの『69』は、見事に1969年を描いた傑作で、「龍さんと同時代の作家たちは、きっと悔しかったと思う」と話し始めた。
「自分にとってのそれは、1995年の渋谷だった。人生の分岐点といえるこの時間を書かなければならない、ずっとそう思っていました」

1995年、主人公は17歳の高校生。強烈で個性的な仲間たちと出会い、街と時代を肌で感じ、“意志を持った顔”になっていく。その変化は激しく、ひたむきだ。
「多感な時期に、あの街でたくさんの人と出会ってきたという支えによって、書くことができた小説だと確信しています」
早見さんはさらに続ける。「作家になりたいという人の読書量の少なさには、正直、失望します。読まずに書けるのは天才だけ。天才でないという自覚があるならかなりの量、読書をしなければ書けるはずがない。それは粗を探すのではなく、その小説の良いところを探しながら読むことが大切」。
まったく同感である。検索して調べて、ネット上のニュースで、誰かの感想を読んで、自分が読んだ気にならないでもらいたい。自分の手で、本を持ち、読んだうえで、感想をもってほしい。
大学時代から、1日に3冊読むことを自らに課して、作家デビュー後も書かない日はない、という早見さん。「明日干されても悔いないくらい、作家になってから手を抜かずに生きています」と言い切る早見さんは、その言葉通り、全力で小説を書き続けている。
現在、愛媛に住む早見さんとの再会が楽しみでならない。










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カタヨリ荘

相原 透(アイハラ トオル) 東京生まれ。20余年、都内書店勤務。その後、出版社に転職。 週刊朝日、IN・POCKET(講談社)、銀座百点、公募ガイド 等  雑誌に書評、著者取材・原稿、寄稿多数。 講談社文庫『光二郎 分解日記 相棒は浪人生』(著者:大山淳子 2017年刊行)の解説を書く。 『カタヨリ荘』の住人になれて嬉しくて仕方がない毎日。 好きな作家:池澤夏樹、沢木耕太郎、桜木紫乃、伊吹有喜、大山淳子、柚月裕子