『何を想うか、どう感じるか』

紹介本:『旅の窓』
(著者:沢木耕太郎 幻冬舎 2003年刊行)

 

 

 

10代の頃、ラジオを聞いていると作家の沢木耕太郎さんが「何か書きたい、例えばノンフィクションのライターになりたいという人がいたら、そういった専門学校に行くこと、学ぶことを否定はしないけれど、僕なら必要なこと、30分で教えられる。アポイントの取り方、レコーダーの使い方とか基本的なことはすぐに教えられる。大事なことは、何を想い、何を感じるか、それがすべてだと思う」と語っていた。

同じころ、雑誌のインタビューで、『家族ゲーム』『ときめきに死す』と話題作を発表していた森田芳光監督も「映画監督になりたいのなら助監督10年やって学ぶこと、僕なら1週間で伝えられる。大事なのは、何を撮りたいのか、描きたいのか、日常の感じ方がすべてだと思う」と(沢木さんと)同様な答えをしていた。

「何を想い、どう感じるか、そしてどのように動くか」
決して大袈裟ではなく、その後の人生に大きく影響を与えてくれた言葉だった。

この「カタヨリ荘」の書評欄を書かせていただき、今回で37回目。
以前から面識のある人も、この欄を読んでいただき、それからお会いする人にもよく言われるのは、「相原さんはよく偶然の出会いがありますね」「出会いと、再会を大切にしていますね」と。
書いてきたことは、もちろん事実だけれど、30年の間に出会った人や読んだ本とその周辺のことを書いているだけで、その瞬間、瞬間、想い、感じたことを伝えているのだな、と今改めて思う。

今回、紹介する『旅の窓』は、1枚の写真と短文で構成された写真エッセイ集。
有名な場所、記念碑ではない、ありふれた風景や人々の写真に、沢木さんが綴る“想い”が重なり輝きを放つ。旅をしながら、列車やバス、ホテルの窓から見る風景、その向こう側にある、自分の内部、心の奥の風景が見えてくる、想像と創造を刺激する良質な本である。
この写真を見ながら、頭の中で自分だけのエッセイを書いてみる。
「何を想い、どう感じるか」今でも噛みしめている。










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カタヨリ荘

相原 透(アイハラ トオル) 東京生まれ。20余年、都内書店勤務。その後、出版社に転職。 週刊朝日、IN・POCKET(講談社)、銀座百点、公募ガイド 等  雑誌に書評、著者取材・原稿、寄稿多数。 講談社文庫『光二郎 分解日記 相棒は浪人生』(著者:大山淳子 2017年刊行)の解説を書く。 『カタヨリ荘』の住人になれて嬉しくて仕方がない毎日。 好きな作家:池澤夏樹、沢木耕太郎、桜木紫乃、伊吹有喜、大山淳子、柚月裕子