『歌詞がフィルムとなり描かれていく』

紹介本:『LiVE 原田芳雄写真集』(撮影:三浦麻旅子リトルモア 2012年刊行)     

勤めている会社が神保町へ引っ越して、神保町シアターがすぐ近くとなった。つい先日まで「七〇年代の憂鬱一退廃と情熱の映画史」という特集プログラムが組まれ、会社の帰り、休日と通いに通った。『旅の重さ』、『あらかじめ失われた恋人たちよ』、『赤い鳥逃げた?』、『無鉄砲の美学』、『竜馬暗殺』、『アフリカの光』、『㊙色情めす市場』、『青春の殺人者』、『ボクサー』、『大地の子守歌』、『太陽を盗んだ男』。初めて観る作品も、何十年かぶりに観る作品もあった。
『赤い鳥逃げた?』、『竜馬暗殺』の主演は原田芳雄さん。見入ってしまう演技、存在だ。
そして帰宅後、シンガー・原田芳雄さんの写真集を見た。
2008年2月29日、東京キネマ倶楽部で行われたバースディ・ライブを撮った写真集である。
スタンダードナンバーとなり、多くのミュージシャンが歌う「横浜ホンキー・トンク・ブルース」は、「♪ヘミングウェイなんかに、かぶれちゃってサ」の歌詞は、芳雄さんが歌う時、ヘミングウェイが吉本ばなな、山田詠美になったりする。
芳雄さんの歌は、“歌詞がカタカタと音を立ててフィルムとなって流れていく”という感じで、役者同様、唯一無二の存在感で歌の世界をつくっていく。
そんなシンガー・原田芳雄さんの表情、世界を感じる写真集だ。
宇崎竜童さんが作った「B級パラダイス」、松田優作さんの作詞「川向こうのラストデー」を聴きながら、ゆっくりこの写真集を眺め、酒を飲んだ。
一度だけ、偶然酒場で原田芳雄さんと鈴木清順監督が飲んでいる席に呼んでいただいたことがある。芳雄さんはゴキゲンで、よく飲み、よく笑っていた。
あの時の表情も、声も忘れない。










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相原 透

相原 透(アイハラ トオル) 東京生まれ。20余年、都内書店勤務。その後、出版社に転職。 週刊朝日、IN・POCKET(講談社)、銀座百点、公募ガイド 等  雑誌に書評、著者取材・原稿、寄稿多数。 講談社文庫『光二郎 分解日記 相棒は浪人生』(著者:大山淳子 2017年刊行)の解説を書く。 『カタヨリ荘』の住人になれて嬉しくて仕方がない毎日。 好きな作家:池澤夏樹、沢木耕太郎、桜木紫乃、伊吹有喜、大山淳子、柚月裕子