『久世光彦さんの残したドラマ、文章、言葉』

紹介本:『歳月なんてものは』(著者:久世光彦 幻戯書房2011年刊行)

テレビドラマの演出家として傑作を創り続け(個人的には1975年放送、沢田研二主演「悪魔のようなあいつ」が妖しく、刺激的で、好きだった)、50歳を過ぎてから小説、エッセイを書き始めた著者、久世光彦氏。久世さんの書く小説、エッセイが好きで、私は難しい漢字や表現は辞書を引きながら、本文で紹介された本や作家も探して読み、引用された文章や言葉、時代考証の意味を探して図書館へ通った。まるで偉大なる大人に挑んでいく小さな子供のような、私はそんな読者だった。
『蝶とヒットラー』(ドゥマゴ文学賞受賞)、『一九三四年冬 乱歩』(山本周五郎賞受賞)『聖なる春』(芸術選奨文部大臣賞受賞)他、評価も高く、『マイラストソング』は舞台(歌:浜田真理子 朗読:小泉今日子)となり、現在も続いている。

今回の作品『歳月なんてものは』は、新聞・雑誌に書かれたエッセイで、「鮮やか人たち」「本と少年幻想」の二章で構成されている。
その中の文章に、久世さんはある俳優の言葉を書いていた。「このごろのドラマや役者は、人間が死ぬということを、忘れているのではないか・・・」
はっとする言葉だった。久世さんは「恋の喜びと死は、いつだって背中合わせであり、死の予感のないところに、恋は生まれない」と書いている。
先日、偶然読んだ雑誌に、モデル・女優の小林麻美さんが久世さんの本を読んだ、そして泣いた・・・久世さんに会いたかったと書かれていた。久世さんが残したドラマ、文章、言葉と出会い、皆、久世さんのことを想うのだろう。
久世夫人が書かれた、この本の「あとがきにかえて 夏は逝く」、そして『テコちゃんの時間』(平凡社・刊)も合わせて読まれることをお薦めしたい。そこには久世光彦氏の姿が、こだわりが、優しさが時に甘く、時に苦く、見えてくるから・・・。










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相原 透

相原 透(アイハラ トオル) 東京生まれ。20余年、都内書店勤務。その後、出版社に転職。 週刊朝日、IN・POCKET(講談社)、銀座百点、公募ガイド 等  雑誌に書評、著者取材・原稿、寄稿多数。 講談社文庫『光二郎 分解日記 相棒は浪人生』(著者:大山淳子 2017年刊行)の解説を書く。 『カタヨリ荘』の住人になれて嬉しくて仕方がない毎日。 好きな作家:池澤夏樹、沢木耕太郎、桜木紫乃、伊吹有喜、大山淳子、柚月裕子