『作品がすべてだ!と作家・丸山健二氏は語った』

紹介本:『ときめきに死す』(著者:丸山健二 求龍堂 2006年刊行 *再生復活版 vol.2)

『ときめきに死す』は、刺激的な作品である。
会社、家族から逃避し、社会のルールから外れていく中年の男。若きテロリストの青年。レンガ色のムク犬。送り込まれてきた女。山荘での凝縮された数日間が描かれ、緊迫のラストまで読者を泳がせていく。
後に、沢田研二主演、森田芳光監督で映画化された。

高校生の時、一度だけ職員室に呼び出されたことがある。
行くと、国語の教師から一冊の本を渡された。それが『ときめきに死す』だった。
どうやら、私が授業中に書いた作文や感想文を読んで、この本が好きじゃないか?と思ったらしい。以来、丸山健二氏の作品を読み続けている。
その後、書店員となった私にある編集者から連絡があった。
「今度、丸山健二さんの本、ウチの出版社から刊行します。それで、長野から丸山健二さんお呼びして、ささやかに会議室ですけど、“作家を囲む会”おこないますので来てください」
数日後、編集者、招待者合わせて10数人の、“丸山健二さんを囲む会”に参加。
はじめて、『ときめきに死す』を読んでから、20年以上の時間が過ぎていた。
丸山健二さんは気さくに、そして歯切れよく、何でも話してくれた。
長野の自宅に、俳優の萩原健一さんが来たこと。『ときめきに死す』は、刊行してすぐ、内田裕也さんから電話がかかってきて、「原作権を欲しい!」と言われたこと。
高倉健さんを主人公に設定した『鉛のバラ』を映画化したくて、某監督が連絡してきたこと。その時、丸山さんは「高倉健さんがやるって言うなら、俺が脚本書きますよ!」と答えたという。その後、連絡はなかったという。
ひとりの招待客(若い読者)が、「小説、書いているから読んでもらえませんか?」と話すと、「いいよ。仕事に就いてひとりで生活できるようになって、その中で書き続けていったら、完成した小説、送ってきなさい。ちゃんと読むから。いい作品だったら、世に出るよう力になるよ。何にしても、作品がすべてだから」と丸山健二氏は語った。
あらゆる文学賞は辞退し、文壇とのつき合いをおこなわず、孤高の作家と言われる丸山健二さん。現在も新作を発表、全集も自ら作ろうと挑戦を続けている。










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相原 透

相原 透(アイハラ トオル) 東京生まれ。20余年、都内書店勤務。その後、出版社に転職。 週刊朝日、IN・POCKET(講談社)、銀座百点、公募ガイド 等  雑誌に書評、著者取材・原稿、寄稿多数。 講談社文庫『光二郎 分解日記 相棒は浪人生』(著者:大山淳子 2017年刊行)の解説を書く。 『カタヨリ荘』の住人になれて嬉しくて仕方がない毎日。 好きな作家:池澤夏樹、沢木耕太郎、桜木紫乃、伊吹有喜、大山淳子、柚月裕子