『ヘンテコな鍼灸師は、“希望”を伝える』

紹介本:『鍼灸日和』(著者:未上夕二 角川書店 2017年刊行)

著者、未上夕二氏は、新人賞受賞後、二作目を書き上げた。デビュー作から3年の時間が過ぎていた。出版の世界は新人賞ラッシュであり、多くの新しい才能を望んでいる。
が、その結果、本来大切であるべき、二作目、三作目がなかなか出ない作家も多く、消えていく元新人賞受賞作家ばかりとなってしまう。
未上さんから「ようやく書き上がり、刊行しました!」と手紙と一緒に本が届いた時は嬉しかった。未上さんの二作目を、ずっと待っていたから。
そして、読後、「これは取材をして、応援しよう!それだけの力作だ」と思った。

平穏で、平凡な家族、西川家。一見わからないが日々の生活の中、社会人二年目の道隆、二人の姉、両親、家族それぞれの気持ちの“ズレ”と“ストレス”が蓄積され、息苦しい毎日が繰り返されていた。道隆は抱えた悩みを、間食でごまかし、太っていき、膝を痛め、偶然見つけた「祖問鍼治療院」を訪れる。ここで施術の腕は確かだが、ちょっと変わった鍼灸師・祖問が登場、西川家の問題、真の姿が明らかになっていく。
物語を動かしていく、鍼灸師・祖問は、独身で、中華「来々軒」でアルバイトをしていること以外、彼についての説明は一切ない。説明過多でないところも、この小説の魅力であった。
祖問は、鍼治療によって、西川家ひとりひとりの身体を良好にしていき、同時に各自の性格や悩みを察し、言葉を投げつける!互いに語り合い、相手の気持ちを汲んで思いやる態度など見せない、距離感も良い!
取材の途中、私は個人的な感想ですけど・・・と断ったうえで
「この鍼灸師は、俳優の濱田岳さんというイメージが浮かびます。それからラストの家族全員がそれぞれの想いをぶつけ合う描写は、映画『家族ゲーム』のラストシーンを思い浮かべて読みました」と伝えると、
側にいた担当編集者とともに驚きの顔になり、「実は鍼灸師のイメージは濱田岳さん、ラストの描写は、編集者さんから参考にしてと映画『家族ゲーム』を渡されました」と未上さんは語った。
この編集者との出会いが、二作目の完成につながったのだな、とその時、感じた。
作家は、伴走できる編集者との出会いがすべてである、と私は思っている。
デビュー作から3年、ようやく書き上げた二作目が今、書店に並んでいる。「次回作は、あまり間をあけないで、書き上げたいと思っています」と未上さんは笑った。いい笑顔だった。










ABOUTこの記事をかいた人

相原 透

相原 透(アイハラ トオル) 東京生まれ。20余年、都内書店勤務。その後、出版社に転職。 週刊朝日、IN・POCKET(講談社)、銀座百点、公募ガイド 等  雑誌に書評、著者取材・原稿、寄稿多数。 講談社文庫『光二郎 分解日記 相棒は浪人生』(著者:大山淳子 2017年刊行)の解説を書く。 『カタヨリ荘』の住人になれて嬉しくて仕方がない毎日。 好きな作家:池澤夏樹、沢木耕太郎、桜木紫乃、伊吹有喜、大山淳子、柚月裕子