『本当と嘘の境界線《ボーダー》・壇蜜日記』

紹介本:『壇蜜日記』(著者:壇蜜 文春文庫2014年刊行)

私は日記は書かない。心の中の本当の、本当の、本当は書けないと思っているから。
いや、そもそも書くという行為そのものが、自分以外の誰かに向けてのものではないだろうか? では何のために書く?誰に読んで欲しい?誰かに見られるかもしれない?

2014年、出版社から「『壇蜜日記』の取材、著者インタビューをしてもらえませんか」と話がきた。「壇蜜さん?・・・どうしょう?」すると編集者はこう伝えてきた。
「ただし、取材の時間は、写真撮影込みで、20分なんですけど」
(そうか、だから私にきたのだな!)とすぐにわかった。「やりましょう!」と私は答えた。芥川賞受賞前の又吉直樹さんに取材の時は、30分だった。
最短時間の更新である。しかも写真撮影をおこなったら、10分~15分ではないか。
面白い!限られた時間の中でどれだけの取材がおこなえ、原稿が書けるのか、真剣勝負であった。

取材に向かう電車の中、偶然、作家の桜木紫乃さんからメールがきた。なんというタイミング!桜木紫乃さんと壇蜜さんは互いを尊敬しあう同士。この幸運を短い取材に生かそう!と思った。
取材が始まった。まず、写真撮影。5分で終了。残り時間15分。
私はゆっくりと、「今日は雨ですね・・・でも雨の日って好きなんですよ。壇蜜さんは?」
「私の家もネコ飼っていますよ。スコテッシュ・フォールドです」「さっき、電車の中で桜木紫乃さんからメールがきて、驚きました」など、なかなか本の質問をしない。
私は話を進める。「でも、取材って不思議で。恋人や友人、親子には取材なんてしないですよね。雑談はするけど。今日、はじめてお会いして、次々に質問をぶつけて答えてもらって原稿書く、なんて・・・まぁ、もちろんこの『壇蜜日記』がたくさんの人に買っていただき、読んでもらえることが目的なんですけど・・・」
そこまで話すと、壇蜜さんはにっこり笑って話し始めた。「そうですね。取材で話すことも、この本に書いたことも実際にあったことを書いているという意味では本当。でもきっと、誰かに読まれる、ということを意識したうえでも本当ですよね」と。
そこからは本当と嘘のきわきわの境界線の話になり、時間がきた。
「では、これで取材は終わりです。原稿、書かせていただきます」と言って席を立とうとする私に、壇蜜さんは、「今日は、取材って気がしませんでした。ふたりでデートしたみたいでした。‥‥公開デート」とまた笑顔。

取材の最後、「こんなにこの本は好評なので、第2弾、期待されているのでは?」と聞いた時、壇蜜さんは「世の中に出ている映画、ドラマ、コミック、小説もみんな、続編を出して失敗していますよね。期待されて、でも第二弾を出さないというほうが正しいと思っています」と答えた。
あれから4年、『壇蜜日記』は第四弾まで刊行(笑)
もし私が「あれは嘘だったのですか」と聞いたら、壇蜜さんはどう答えるだろう?
「いいえ、出版社の押しの強さと、マネージャーの思惑、そして印税の誘惑に勝てない自分に正直に従っただけです。だから嘘ではなく、本当です」と答えるかもしれない。










ABOUTこの記事をかいた人

相原 透

相原 透(アイハラ トオル) 東京生まれ。20余年、都内書店勤務。その後、出版社に転職。 週刊朝日、IN・POCKET(講談社)、銀座百点、公募ガイド 等  雑誌に書評、著者取材・原稿、寄稿多数。 講談社文庫『光二郎 分解日記 相棒は浪人生』(著者:大山淳子 2017年刊行)の解説を書く。 『カタヨリ荘』の住人になれて嬉しくて仕方がない毎日。 好きな作家:池澤夏樹、沢木耕太郎、桜木紫乃、伊吹有喜、大山淳子、柚月裕子