『高見のっぽさんの志、知性、優しさ』

紹介本:『夕暮れもとぼけて見れば朝まだき ノッポさん自伝』(著者:高見のっぽ 岩波書店 2017年刊行)

「今日は宜しくお願いします!」これは、一緒に待っていたカメラマンと私に、高見のっぽさんが取材の部屋に入って来られた時のはじめの言葉。私の憧れの人である。
小学校に上がる前、夢中で見ていたテレビ番組『できるかな』。
のっぽさんとゴン太くん、のこ姉さんのナレーションが大好きで、子供の頃「大きくなったら“のっぽさん”になりたい」と言っていたと親から聞いていたほど。
後日、“のっぽさん”は職業ではなく、世界でひとりしかいない人なので、誰も“のっぽさん”にはなれないのだ、とわかるのだが(笑)。

本書は生い立ちから、役者を志したきっかけ、人気番組『できるかな』に起用され、国民的な人気を得たこと、作詞、絵本作家、放送作家時代のことなど、みんなが知っている“のっぽさん”と誰も知らなかった“のっぽさん”を読むことができる一冊。
取材の途中、のっぽさんが注文した、たこ焼きが届き、みんなで食べた。
「僕はお酒が飲めなくて、でも、今日は本当に嬉しくて、こんなに僕の本を誉めてくれて感激・・・また、会ってくださいね」なんて言ってくださり!こちらこそ感激の私。
さらに、のっぽさんのことを好きになってしまった。
『できるかな』についての文章でも、あまり手先が器用ではなかったことが綴られている。「僕は不器用で、だからこそ一所懸命にやったの。『できるかな』は、工作の手順を教えるのじゃなくて、工作の楽しさを伝えることが目的だから。一生懸命さは伝わったと思いますよ」と笑顔の、のっぽさん。ひとつひとつのエピソードが、ピカピカに光って私の心に届いた。
ごん太くんの中に入っていた方、ナレーションのお姉さんも今はいない。
でも「この本、喜んでいますよね」と話すと、「きっとね」とのっぽさんは笑い、ふたりの話もたくさんしてくださった。
「自分は生き方も、世渡りもそんなに上手じゃなくて、ぶつかったり、転んだりね。でもだからこそわかったことや知った感情があるから、大事にしていこうと思いますね」
とのっぽさんは、語ってくださった。
のっぽさんを見て育った大人たち、のっぽさんのことを知らない若い世代の人たちにも手にとってほしい、読んでほしい本である。
83歳の現在も好奇心旺盛、宮沢賢治が大好きで読書家、そして人に優しいのっぽさんは、一生懸命の達人であった。










ABOUTこの記事をかいた人

相原 透

相原 透(アイハラ トオル) 東京生まれ。20余年、都内書店勤務。その後、出版社に転職。 週刊朝日、IN・POCKET(講談社)、銀座百点、公募ガイド 等  雑誌に書評、著者取材・原稿、寄稿多数。 講談社文庫『光二郎 分解日記 相棒は浪人生』(著者:大山淳子 2017年刊行)の解説を書く。 『カタヨリ荘』の住人になれて嬉しくて仕方がない毎日。 好きな作家:池澤夏樹、沢木耕太郎、桜木紫乃、伊吹有喜、大山淳子、柚月裕子