『制作、聞く、語る、そして小説を書くこと』

紹介本:『記者の報い』(著者:松原耕二 文春文庫 2016年刊行)
「フェアの写真見ました。ありがとうございます」このような書き出しで、メールが届
いた。ТBSのキャスター、記者の松原耕二さんからだった。
縁あって知り合った映画監督、作家の山田あかねさんが、私が働いていた書店を訪ねて
くださった時、「早稲田大学のサークルで後輩に、TBSの松原耕二さんがいたの。
彼は小説を書いていて、どうか応援してください」と言われ、早速それまで刊行してい
た本を取り寄せ、フェアをおこなった。その写真を撮り、山田さんに送ったので、経由
して伝わったのだと思う。「今度、インタビューを題材にした小説を書いたので、ゲラ
を読んでもらえませんか?」と何度目かのメールに書かれてあり、喜んで読ませていた
だいた。その小説が『記者の報い』(単行本のタイトルは『ハードトーク』)
インタビューの魅力、奥深さ、そして魔、怖さが表現された、小説だった。
私自身、作家、書き手へのインタビュー、取材の面白さを感じていた頃であり、主人公
・岡村俊平の心情、行動はたいへん興味深いものがあった。
かつてはエース記者であった岡村が、逆境にさらされ、名声も家族も失う。その後、断
ち切れない負の連鎖から抜け出すため、岡村は因縁の相手、政治家・藤堂一郎にインタ
ビューをおこなう。再生を賭けた、”この勝負”は、ふたりの姿が見えるような、熱の
ある見事なエンディングだった。
1年半以上、メールや手紙のやりとりは続き、お互い、そろそろお会いしましょうか!
ということになった。下北沢の酒場で待ち合わせ、初めまして、と握手。乾杯して、す
ぐに本の話へ。
「インタビューではじまり、インタビューで終わる。それだけ、決めていました」
と、松原さんは言われた。そして「自分も記者として、インタビュー、取材をしていく
中、悩んだこと、傷ついたことも多かったけど・・・それでも続けているのは、それ以
上に、その人物の魅力を感じたり、新しい価値観を学んだりという驚きや感動が多かっ
たからだと思う」と続けた。
学生の頃の話、TBSに入社してすぐ、日航ジャンボ機墜落事故で現地へ行き着のみ着のままで2週間帰れなかったこと、故・筑紫哲也さんのこと、大好きな映画について・・・
気がつくと、すでに朝の4時を過ぎていた。それでもお互いにまだまだ話したかったような気がする。
テレビの世界では、キャスター、記者として報道を中心に活躍、ドキュメンタリーにも参加、良質な番組に携わっている。そして、「ほぼ日」やちくまウェブにエッセイやコラム、そして文芸誌に小説も執筆。早く松原耕二さんが書く、小説が読みたい!










ABOUTこの記事をかいた人

相原 透

相原 透(アイハラ トオル) 東京生まれ。20余年、都内書店勤務。その後、出版社に転職。 週刊朝日、IN・POCKET(講談社)、銀座百点、公募ガイド 等  雑誌に書評、著者取材・原稿、寄稿多数。 講談社文庫『光二郎 分解日記 相棒は浪人生』(著者:大山淳子 2017年刊行)の解説を書く。 『カタヨリ荘』の住人になれて嬉しくて仕方がない毎日。 好きな作家:池澤夏樹、沢木耕太郎、桜木紫乃、伊吹有喜、大山淳子、柚月裕子