『熱情、記憶、挑戦、覚悟、そして弾けあう輝き』

紹介本:『十四歳のエンゲージ』(著者:谷村志穂 講談社文庫 1995年刊行)

作家・谷村志穂さんの小説はほとんど読んでいたと思っていたが、何故か、ずっと後になって出会った作品が『十四歳のエンゲージ』だった。
出会う時が、いちばん相応しいタイミングだ、といつも思っていた私だが、ずっと若い時にこの作品を読んでいたら、その時の自分はどう感じたのか、と少しだけ残念だった。それは映画『さらば青春の光』(1979年、イギリス映画)を、10代の時に観たかったなぁと思った感じに似ている。
また、読みながら、意味もなく、コミック『ホットロード』や、尾崎豊さんのセカンドアルバム『回帰線』、創刊されたばかりの雑誌「スイッチ」によく掲載されていた、写真家・橋口譲二さんの写真と文章・・・などなど回想した。

何者にもなれず、無力で、自意識が自分を支配していく14歳。誰もが14歳の時間を生き、過ぎていく。小説の登場人物たちのぶつかり合い、悔しがったり、笑いあったりする様子は、大人にはない輝きがある。
「十四歳は、どうしても書いておきたい時間だった。十四歳という年齢に、私はけっして戻りたいとは思わないが、その時間がどんなに大切だったかを忘れることができずにこれまでやってきたからだ」(本書、単行本・あとがきより)
この本は、1991年、単行本として刊行された。その時間、当時の年齢の谷村さんの“一瞬”だけど、その時の“すべて”が凝縮された作品だと思っている。
「この作品を書いた頃の谷村さんが、今の谷村さんを(今の谷村さんの作品を)見ていると思います」、そんなことを本人に伝えた気がする。
それは、同時に『十四歳のエンゲージ』を読んだ時の、気持ちの騒ぎを、おまえは今も持っているのか?という自分への問いかけでもある。

谷村さんと飲むお酒はいつも美味しく、いい時間だ。
私は最近、観た映画や芝居の話をして、妻の自慢話をして、これからやっていきたい夢を話す。谷村さんは、大好きな果物・林檎のこと、一緒に暮らしている可愛いネコの話をして、これから書きたい小説のことを少しだけ・・少しだけ教えてくれる。
また、美味しく飲みたいな。久しぶりに小説『十四歳のエンゲージ』について話してみたい、そんな気がする。                                                                    










ABOUTこの記事をかいた人

相原 透

相原 透(アイハラ トオル) 東京生まれ。20余年、都内書店勤務。その後、出版社に転職。 週刊朝日、IN・POCKET(講談社)、銀座百点、公募ガイド 等  雑誌に書評、著者取材・原稿、寄稿多数。 講談社文庫『光二郎 分解日記 相棒は浪人生』(著者:大山淳子 2017年刊行)の解説を書く。 『カタヨリ荘』の住人になれて嬉しくて仕方がない毎日。 好きな作家:池澤夏樹、沢木耕太郎、桜木紫乃、伊吹有喜、大山淳子、柚月裕子