『東大、光クラブ、夭折、俳優・根津甚八の演技』

紹介本:『青の時代』(著者:三島由紀夫 新潮文庫 1988年刊行)

高校時代、夢中で三島由紀夫を読んだ。学校の帰り、立川の本屋さんに寄り、「今日は三島の何を買おうか」と文庫の棚を見つめていた。
『青の時代』は、三島作品の中で評価が低く、著者本人も「納得がいかない執筆だった」と語っている。作家デビュー後、たちまち人気が出て、多くの執筆に追われ、充分な熟成がなされぬまま、執筆、連載、刊行に至ってしまったことが原因だという。
それでも、私にとって“傷だらけの傑作”と呼んでいる本書、いまだに気になる作品だ。
この本を読んだのが先か、NHKドラマ『蒼い光芒』(出演:根津甚八、岡田祐介)が先か記憶が定かでない。15歳の私は一秒たりとも見逃さない!という気持ちでこのドラマを見ていた。主人公を演じた根津甚八さんは圧倒的な存在感であった。この人は“演じること”以外のことはできないだろうな、とも思った。そういう人が役者をやってほしいと思った。故・向田邦子さんは、根津甚八さんが好きで「絶対にお財布にお金をたくさん持っているような役者になっちゃ駄目よ」と言ったそうだ。なんだか理屈ではなく、向田さんの根津さんに対する想いを感じる。
諸事情のため、ドラマ『蒼い光芒』は再放送も、ビデオ化、DVD化もされていないのが残念でならない。

『青の時代』は、現役東大生が闇金融会社「光クラブ」を経営、時代の寵児となり、完全犯罪を公におこなうようなその戦略、経営、そしてその破綻までの実際の事件が、三島によって描かれている。原作も、ドラマも、主人公の自殺によって物語の幕が下りる。自らの死をもちいて、自己表現を完全にしたのだ。
このラストに15歳の私は激しく怒りを感じた。
「ぶざまでも、カッコ悪くても、生きているほうがいい」と。
50歳を過ぎた今、三島の『青の時代』を再読してみたら、どんな感情に揺さぶられるのだろうか?ちょっと楽しみだ。

そういえば、「カタヨリ荘」101号室の利重さんは、映画『MISHIMA』に、主人公、三島由紀夫役(三島の若いころ)で出演されている。日本未公開、作品。
撮影の現場や、作品についてとてもお聞きしたい。いつか、エッセイに書かれるかな?
とも期待している。










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相原 透

相原 透(アイハラ トオル) 東京生まれ。20余年、都内書店勤務。その後、出版社に転職。 週刊朝日、IN・POCKET(講談社)、銀座百点、公募ガイド 等  雑誌に書評、著者取材・原稿、寄稿多数。 講談社文庫『光二郎 分解日記 相棒は浪人生』(著者:大山淳子 2017年刊行)の解説を書く。 『カタヨリ荘』の住人になれて嬉しくて仕方がない毎日。 好きな作家:池澤夏樹、沢木耕太郎、桜木紫乃、伊吹有喜、大山淳子、柚月裕子