『挑戦しつづける志 田牧大和さん』

紹介本:『鯖猫長屋 ふしぎ草子』(著者:田牧大和 PHP文芸文庫 2016年刊行)

ここ数年、「期待の時代小説の作家、教えてください」と聞かれると、ひとりの作家の名前を挙げ続けている。「時代小説のエース、田牧大和さん」と。
2007年、小説現代長編新人賞を受賞、単行本、新作のシリーズを書き続け、人情、友情、恋、謎解き、笑い・・・縦横無尽に広がっていく物語に、読者は(もちろん私も)すっかり夢中になっている。
書店員時代、昼休み(といってもランチタイムの仕事が終わったあとの、14時半くらい)に、毎日来店してくださる同じビルに入っているお店の料理人さんがいた。彼は時代小説しか読まない。ある時、なぜか聞いてみると
「時代小説に出ていく男には、粋なしぐさや、やせ我慢があって面白い。女は控えめで、情が深い。だから、俺は時代小説が好きなんだ。現代(いま)の小説には、そういったものを感じないから」と話してくれた。
その彼も、田牧大和さんの新刊は追いかけて読んでいる。
彼だけでなく、新刊を楽しみにしている読者も、たくさんいるが・・・そんな数では足りない。田牧大和さんの新刊が、男性作家の棚にあるのを見ると(いや、あの北村薫さんだって、今も女性作家に分類されていることもあるのだが)まだまだ認知度が足りないと思う。
田牧さんは、人気作を書いても、決して自己模倣はしない。その推敲に推敲を重ねた文章は、無駄のない、明快で完成された文章だ。
新人賞を受賞後、消えていってしまう作家もたくさんいる中、田牧さんは刊行を続けていることも、本当にすごいこと。
言い訳をせず、きちんと作品を刊行しているという事実にも、作品そのものの魅力同様、私は勇気を得ている。挑戦を続ける勇気、志の高い、優れた作家である。

傑作ばかりの作品の中で、断トツに好きなのが、『鯖猫長屋 ふしぎ草紙』。
“長屋で一番えらいのは猫!?”という本の帯・コピーも冴えている。
長屋でおこる奇妙な事件を解決するのが、この物語の主人公、売れない絵描き・拾楽(しゅうらく)。これが魅力ある奴で、魅力ある奴の周りには、これまた魅力ある奴ら、女も集まってくるから面白い!そして、彼ら彼女らを見守っている鯖縞模様の三毛猫の“サバ”は、炊きたての白飯しか食べないわがままものの猫様だ。
現在、『鯖猫長屋』は人気シリーズとなり、2018年は第四弾が刊行予定。
早く読みたい!とひたすらに願うばかり(笑)

担当編集者さんのご厚意で、田牧さん、編集者さん、私の三人で浅草へ、お蕎麦を食べに行ったことがある。“田牧さん、浅草、お蕎麦”。夢のような時間だった。
もちろん、四六時中、私はお店のどこかに、きっと“サバ”が隠れていると思って、探し続けていた・・・。










ABOUTこの記事をかいた人

相原 透

相原 透(アイハラ トオル) 東京生まれ。20余年、都内書店勤務。その後、出版社に転職。 週刊朝日、IN・POCKET(講談社)、銀座百点、公募ガイド 等  雑誌に書評、著者取材・原稿、寄稿多数。 講談社文庫『光二郎 分解日記 相棒は浪人生』(著者:大山淳子 2017年刊行)の解説を書く。 『カタヨリ荘』の住人になれて嬉しくて仕方がない毎日。 好きな作家:池澤夏樹、沢木耕太郎、桜木紫乃、伊吹有喜、大山淳子、柚月裕子