『岡本喜八監督のシナリオだったら、全部、読みたい!』

紹介本:『岡本喜八 お流れシナリオ集』(著者:岡本喜八 龜鳴屋 2012年刊行)

高校生の時、岡本喜八監督の『近頃なぜかチャールストン』を観に行った。渋谷へ行き、てくてく歩いて、遠くにあった上映館“シネマプラセット”へ、少し雪が降っていたことも覚えている。あまりの面白さ、作品の魅力に取りつかれてしまい、パンフレットを買って、帰りの電車の中、掲載されていた採録シナリオを読み続けた。
「シナリオって、役者さんが演じるために書かれたものだと思っていたけど、シナリオには、シナリオの面白さ、魅力がある!」そう、思った。
『結婚のすべて』『殺人狂時代』『日本のいちばん長い日』『肉弾』『青葉繁れる』『姿三四郎』『ダイナマイトどんどん』『ジャズ大名』『大誘拐 RAINBOW KIDS』・・。
岡本喜八監督作品というキーワードのみで、見続けていった。
そして、いつも映画館を出るとき、予想できないストーリーの展開と魅力的な台詞に圧倒され、気持ちが騒ぎ、「生きているっていいな」という心の底から、生きていることを肯定的に思っている自分に気づくのだ。
一度だけ、新宿の映画館で、岡本喜八監督の作品『江分利満氏の優雅な生活』の上映と、原作の山口瞳さんの講演会があった。
山口瞳さんは「私は講演会は一切お断りしています。今日、来て話をしているのは特別なのです。それは私が岡本喜八監督のことを尊敬していて特別に好きだから、来てお話しています!」と冒頭に話し、講演の最後のほうで「そんな私でも、もし日本が戦争をはじめる!と言ったら、手を挙げて反対と言います。そうでしょ、監督!」と会場に声をかけた。すると私のすぐ後ろに岡本喜八監督は座っていらして、手を挙げて「はい、私も反対します!」と大きな声で山口瞳さんに言葉を返した。
「カッコいい!!! 岡本喜八監督! やっぱり黒い服を着ているじゃないか!!!!」
私はドキドキしていた。

未発表シナリオ集の本書は、シナリオ文学としても、脚本を書きたい人にとっても、もちろん岡本喜八監督の作品が好きな人にとっても、宝物の一冊である。
『青い眼の赤トンボ』『五拳』『アンドロイド』(もう!タイトルだけで絶対に思いつかないタイトルだ!)このシナリオと、喜八プロダクションの武井さんの解題、そして映画プロデューサーで、岡本喜八監督の夫人・岡本みね子さんの「感謝を込めて」が収録され、装丁・イラストは和田誠さん。贅沢で、素敵な本である。
私は岡本喜八監督と言葉を交わしたことはない。だけど、今でも映画、エッセイ、そしてこのシナリオ集を読み、岡本喜八監督の作品と会話を続けている。

 










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相原 透

相原 透(アイハラ トオル) 東京生まれ。20余年、都内書店勤務。その後、出版社に転職。 週刊朝日、IN・POCKET(講談社)、銀座百点、公募ガイド 等  雑誌に書評、著者取材・原稿、寄稿多数。 講談社文庫『光二郎 分解日記 相棒は浪人生』(著者:大山淳子 2017年刊行)の解説を書く。 『カタヨリ荘』の住人になれて嬉しくて仕方がない毎日。 好きな作家:池澤夏樹、沢木耕太郎、桜木紫乃、伊吹有喜、大山淳子、柚月裕子