月旅行のおすそわけ

 時事ネタはあまり書かないようにと思っているんだけど、宇宙に行く気がなくなった話を先日書いたら、すぐにZOZOTOWNの前澤さんが月旅行に行くって発表してたもんで、そのタイミングに笑ってしまった。
 2023年っていうのは流石に無理だろ、新手の詐欺に引っかかっちゃったんじゃないかって勝手に心配して調べてみたら、スペースX社っていうのは今年の頭にファルコンヘビーってロケット飛ばしてロードスターとかいう車を宇宙空間に向かって放ったんだってね。それをライブビューで YOUTUBE中継したりもしてる。それだけの技術力があれば5年は無理でも10年ぐらいで本当に月まで行けるのかもしれないね。まあ、宇宙に車を放り出すっていう行為には賛否両論あるだろうけど。「面白い!」って盛り上がる人もいれば、「不遜だ!」って怒る人もいるだろう。僕のおじいちゃんが生きてたらきっと怒ったに違いない。アポロが月に行った時にも「月にはウサギがいればいいんだ。それを人間ごときがつけあがって。ロクなことにならねえぞ」って怒ってたからなあ。まあ、その話は別にして。
 びっくりしたのは、思ったより一人当たりの金額が安かったこと。一人100億円で行けちゃうんだって?もう20年ほど前になるけど、宇宙空間でCMを撮る企画の話を広告代理店の人たちと話をしていた時、うろ覚えではあるけれど、ロシアの宇宙ステーションに数日滞在して戻ってくるのに確か80億円だとか言ってたと思うから、それに比べると随分安くて拍子抜けした。いや、もちろんそんなお金持ってないけどね。でも、宇宙ステーションに資材を運ぶ定期便に同乗させてもらって80億に比べると、純然たる宇宙旅行で100億って随分安くない?だってお客さんとして行くってことは、宇宙飛行士のクルーが別にいるってことでしょう?アポロ13みたいに予想外の事故が起こった時に地球と交信しつつ故障を直したり船外活動や手動操作ができる知識と技術を持った人が絶対に必要なわけでさ、そこにお客さんも足すとなれば、それだけロケットも大きくしなきゃいけないんだろうし、つまりそれって、アポロ計画よりハードルが高そうじゃない?
 宇宙飛行士のみならず、ロケットを作ったり発射したり交信をしたり、サポートするすべての人たちのギャラに加えて、保険や旅行社の儲けまで考えると、1000億ぐらいじゃ月はとても無理じゃないかしら。前澤さんたち以外にも搭乗者を募って結構な大人数で行くことになるのかしら。いや、そんなことしたらもっとロケット飛ばすの難しくなるよね。だからきっと、いろんな企業から頼まれた事業を詰め込んでいろんなお金集めて飛ぶんだろうね。そうとしか考えられない。
 だったらさ、ロケットの外に全天球カメラを取り付けてVR中継してくれないかな。そしたらVRゴーグル付けて自宅にいながら僕らも月旅行ができちゃう。実際にロケットに乗ってる人は船外活動でもしない限りは窓からしか宇宙を見られないけど、VRゴーグル付けてる人は、窓越しでも宇宙服越しでもなく、まるで肉眼で見たように360度の宇宙を見渡せる。おまけに、観光地みたいに周りに人がいる中での体験じゃなくて、たった一人で宇宙を丸ごと自分のもののように見渡せる。これってすごくない?ぜひやってほしい。1万円ぐらいなら喜んで払っちゃう。家族で3万の月旅行。うわあ、わくわく。4Kか8Kで中継してくれれば実際に肉眼で見ているのと遜色ない臨場感が味わえるんじゃないかしら。実際に行ってきた人と違うのは、「実際に行ったんだ」という達成感だと思うけど、脳みそが体験するということにおいては、肉眼でもVRでも代わりはないしね。本当に限られた数人しか体験できなかったことが、人類みんなで共有できるようになるかもしれないなんて、考えただけで興奮する。そういうことのためにも、前澤さんみたいな人たちが、酔狂と言われようと、ものすごいお金出して先陣切って可能性を拡げていってくれなきゃいけないわけで。だから月旅行、本当にうまくいってほしいなあ。
 それで思ったんだけど、誰かこの全天球中継を、宇宙空間だけじゃなくていろんな場所でやってくれないかしら。エベレストの頂上とか、ウユニ塩湖とか、マチュピチュとかからさ。全天球カメラとバイノーラルマイクをソーラー電池と繋げて設置するぐらいなら景観を汚すこともないだろうし。そしたらエベレストの頂上を24時間いつでも体験できるんだよ!すごくない?実際に登ったら頂上にはせいぜい数十分しかいられないけど、この中継なら奇跡のような瞬間の景色をいくらでも体験することができる。真夜中にたった一人エベレストの頂上に立つことができる。でも同じ瞬間に違う場所で、同じその風景を共有している人が無数にいる。なんてSF的で、なんてロマンチックなんだろうか。
 近い将来、プラネタリウムはそんな風になるかもしれないね。みんなVRゴーグルとヘッドホン付けて、「それでは、エベレスト頂上から見た現在の夜空を見てみましょう」なんてナレーション聞きながら、人工的な灯りに一切邪魔されない純粋な夜空を見る日がいつかくるかもしれない。いや、きっとくる。ああ、楽しみだ。