休日の散策

 アウトサイダーアートとかアール・ブリュットと呼ばれるアートが好きで、機会があると観に行く。作らずにはいられない内なる衝動に突き動かされて出来た純粋なアートは、跳ね回りたくなるほどワクワクさせられたり、描いた人の心の奥底に引きずり込まれて囚われてしまったように動けなくなったり、魂をいろんな方向に揺さぶられる。揺さぶられた振動で魂に張りついていた変な垢が落ちてスッキリするので、僕はこういうものを、魂の洗濯機と呼んでいる。
 外神田にあるエイブル・アートジャパンというNPOのA/A galleryというギャラリーがずっと気になっていたので、行ってみることにした。
 銀座線の末広町で降りて、スマホのナビで自分の今立っている場所と行く方角を確認して、歩き始める。テクノロジーが発展しても面白いだけで便利になったと感じることがあまり無い僕でも、このナビゲーションというシステムだけはすごいと思う。これのおかげで、初めてのロケ場所にでも迷わずに行ける。前日に一万分の一の地図を引っ張り出して調べていた頃を思い出すと、本当に時代が変わったなと思う。ただ、地図を見るのと、適当に歩いて迷子になるのが好きな僕にとっては、仕事以外ではほぼ無用なのだけれど、でも最初から最後まで逐一案内してもらうのではなく、こういう風に位置と方向だけ確認するという使い方にも、とても便利だ。
 着いたのは、NPO団体などがよく入っている、廃校舎を区切ってシェアしている建物だった。ちょうどIT関係のイベントをやっていたようで、コンベンションやらプレゼンテーションやらで賑やかに大勢の人が廊下を行き交っていて、文化祭に紛れ込んでしまった感じに最初は戸惑ったけど、階段を登ると、お目当ての場所は、ひっそりと静かで、ほっとした。
 教室ひとつ分の広さのギャラリーは、とても感じが良かった。作品とプロフィールだけがただ飾ってあって、芳名帳にサインしたり興味の目で見られたりすることもなく、静かに作品を堪能できた。
 同じフロアに小さなギャラリーがいくつもあったので、ついでに回ってみる。
 ホントにいろんなアプローチの表現があって、楽しい。すっかり楽しませてもらったのにタダで申し訳ないなと思ったりもする。作品を買うほどお金はないけれど、気に入った人が幾らでも入れていい投げ銭箱があったらいいのになと思う。受付にわざわざ千円札を出して「これを作家さんに」なんていったら変人に思われそうだけど、応援する気持ちを募金できれば、画材の足しぐらいにはなるだろうし。
 秋葉原も近いようなので、帰りはそっちに歩いてみることにした。僕はこういう、ついでの散策が大好きだ。
 本当に久しぶりに来たので、秋葉原も随分雰囲気が変わったなと思う。電気屋さんの街というより、オタクエンターテイメントの街みたいに見える。僕が若い頃は部品屋さんがいっぱいあったけど、そういうのは裏通りに引っ込んだんだろうな。AKB48劇場という看板を見て、ああここがそうなのかと感心したりしながら歩く。たこ焼きや肉の串焼きなんかも売っていて、それをぱくつく外人さんを見ながら、すっかり観光地だなあと思う。
 外人さんやオタクさんやメイドさんやコスプレさんが行き交うのを見ながら、「いい時代なんだよな」と思う。相変わらず日本は流行りのスピードが早いけれど、それとは関係なく、誰もが自分の趣味を選べて、仲間を探すことができる時代。「カッコイイ」は一種類じゃなくて、自由に選べばいいもの。オタクファッションだって昔はダサいものとしてバカにされていたはずなんだけれど、文化がはっきりと認知されてくると、選べるファッションスタイルのひとつになった。
 マイノリティであることを卑下しないですむ、考えてみれば夢のような時代になってきたんだなと思うけど、自分の好きなものだけで周りを埋め尽くして、他のことには関心がない人が増えてきているような気も、ちょっぴりだけどする時がある。
 自分の大好きなものがはっきりあって、どんどん他のことにも面白がれて、好きなことが増え続けていく、そういう風に生きていきたいなと思う。